【作品紹介】
厨子甕とは、火葬以前の沖縄の習慣であった改葬において、洗骨した遺骨を納める「骨壺」のこと。沖縄の墓は、亀甲墓(カメヌクー)が有名であるが、
このデザインは女性が寝そべって股を広げたかたちでもあり、甕を収める穴はいわば産道といえる。死んでから生まれた道を通って後生に帰っていく、
「母体回帰」の大らかな思想といえます。(参照:OkinawaCultureArchive、WonderOkinawa)
シーサーは除災招福を願う“守護神”としてひろく親しまれているものですが、死者の魂を守る意味で厨子甕や石棺に置かれたりもしています。
「新世紀の卵展」での厨子甕はシーサーを男性性として捉え、その背面には女性性を表現しています。男と女がひとつになり、新たな生命に繋がっていく。
それは時には陰と陽をあらわし、不可分のものである。
--連綿と続き、育まれてきた島の“祈り”を現代の生活に息づく芸術として造形し、より自由でポップな伝統として機能させていくことで伝わることがある。
後生と今生が緩やかにつながった独特の風景をもつといわれる沖縄、現在でも折に触れ先祖との対話を大切にする(ゆえに本展覧会も旧暦正月)。
人々の生活から生まれたシーサーは、沖縄のプリミティブアートでもある。
蛍光色のスプレーで彩色された造形はこれからも、未来に向かって常に伝統を揺さぶっていくものであり、また揺るぎない伝統を持つ島の文化に敬意を表す
ものである。